【2026年改定速報】診療報酬改定「+3.09%」から読み解く選ばれる薬局の条件と採用戦略
2026年1月を迎え、医療業界では次期診療報酬改定に向けた議論がいよいよ大詰めを迎えています。 日々の業務にお忙しい薬局経営者様や薬剤師の皆様におかれましては、様々な情報が飛び交う中で、期待と不安の両方を感じていらっしゃるのではないでしょうか。
先日公表された資料の中で、特に大きな話題となっているのが「診療報酬改定率 +3.09%」という数字です。 これは近年の改定の中でも非常に大きなプラス幅であり、国が医療現場、そして薬局に対してしっかりと投資をするという意思表示をしたとも受け取れます。
しかし、この数字を単なる「利益増」と捉えるのは早計かもしれません。内訳を詳しく見ていくと、これからの薬局経営、そして何より「採用戦略」において非常に重要なメッセージが隠されています。 今回は、2026年1月時点の最新資料を基に、現在進められている議論のポイントを整理し、それが今後の薬剤師採用や育成にどのような影響を与えるのかについて、じっくりと考えてみたいと思います。
1. 「+3.09%」の内訳と採用市場へのインパクト
ニュース等で報じられている「+3.09%」という数字は、一見すると大幅な増額に見えますが、その中身をしっかりと理解しておく必要があります。資料によりますと、この数字は主に以下の要素で構成されています。
・賃上げ対応:+1.70% ・物価対応:+1.29% ・通常改定:+0.25% ・効率化/適正化:▲0.15%
これらを合算した結果が3.09%です。ここで最も注目すべきは、プラス分の多くが「賃上げ」と「物価高騰対応」に充てられているという点です。 特に「賃上げ対応」の比重が非常に大きく、これは国が「医療現場で働く人々、特に若い世代の待遇を改善し、人材を確保しなければならない」という強い決意を持っていることの表れです。
一方で、調剤単体の技術料ベースで見ると、実質的には「+0.08%」という数字も出ています。 これは、賃上げや物価対応を除いた純粋な技術評価分は微増にとどまることを意味します。 つまり、今回の改定で得られる収益は、内部留保にするのではなく、「働くスタッフへの還元(賃上げ)」に充てることが強く期待されているのです。
2. 賃上げ対応が「採用力」の差になる時代へ
まず考えられるのは、「ベースアップ評価料」などの仕組みを活用して給与水準を引き上げる薬局と、そうでない薬局の二極化です。 求職者である薬剤師や薬学生は、この動きを敏感に見ています。「国が推奨する賃上げに対応している薬局かどうか」は、今後、就職先を選ぶ上でのひとつの安心材料になってくる可能性があります。
経営者の皆様にとっては、改定による原資をうまく活用し、初任給や既存スタッフの給与に反映できるかどうかが、優秀な人材を確保するための大きな分岐点になりそうです。 「うちはスタッフを大切にして、国の方針に合わせて待遇を改善しています」と胸を張って言えることが、何よりの採用ブランディングになるのではないでしょうか。
3. 調剤基本料の見直しと「機能重視」の採用
薬局経営の根幹となる「調剤基本料」についても、議論が深まっています。 「患者のための薬局ビジョン」策定から約10年。国は一貫して「立地に依存した経営」から「機能を発揮する経営」への転換を促してきました。
・集中率計算の厳格化 特に議論の対象となっているのが、特定の医療機関からの処方箋集中率が高い薬局です。 資料によりますと、これまでは月4,000回を超えるような大規模な医療モールが基本料減算の対象となっていましたが、今後はその基準がさらに広がる可能性があります。 具体的には2,000回から4,000回未満のモールや、同一建物内にある医療機関との合算ルールなどが検討されています。 また、敷地内薬局や、特定の診療所と一体的に運営されている薬局(マンツーマン薬局)についても、より公平性を重視したルール作りが進んでいるようです。
この流れは、採用したい人物像にも変化をもたらします。 これまでは、たくさんの処方箋を素早く処理する能力が求められていたかもしれません。しかし、これからは「立地」ではなく「薬局の機能」で患者様に選ばれる必要があります。 そのためには、対人業務に強く、患者様とのコミュニケーションを通じてファンを作れる薬剤師の存在が不可欠です。 採用面接においても、単なる調剤スキルだけでなく、「患者様とどう向き合いたいか」「地域でどのような役割を果たしたいか」というマインドセットを確認することがより重要になってくるでしょう。
4. 後発医薬品・地域支援体制加算と「連携力」
・「使う」から「備える・連携する」へ 後発医薬品については、これまでの「使用率」重視から、「安定供給への貢献」へと評価の軸足がシフトしています。 具体的には、十分な品目数を備蓄しているか、そして地域の薬局間で在庫を融通し合える体制(地域在庫共有)に参加しているかといった点が重視される方向です。
・地域支援体制加算の実績重視 多くの薬局様が算定を目指す「地域支援体制加算」についても、単なる届出だけでなく、実質的な地域活動の実績が問われることになりそうです。 資料の中では、「加算なし」の薬局と「加算あり」の薬局の間には大きな収益の差があり、その溝を埋める存在として「健康増進支援薬局」としての機能が期待されています。
5. 医療DXと在宅医療で輝く「新しい薬剤師像」
今回の改定議論の中で特に採用のアピールポイントになりそうなのが医療DXと在宅医療の分野です。
・医療DX推進体制整備加算の定着 医療DXについては、一部で廃止論もありましたが、現状では要件や評価を見直した上で「維持・継続」という方向で調整が進んでいます。 若い世代の薬剤師や薬学生にとって、DXへの取り組みは「働きやすさ」や「先進性」の象徴でもあります。ITツールを積極的に導入していることを採用広報で伝えることは、非常に効果的です。
・在宅医療における専門性の発揮 在宅医療では、「量」から「質」への転換が進んでいます。 注目すべきは、ポリファーマシー対策や残薬調整のために、「医師と薬剤師が同行して訪問した場合」に新たな評価を設けるという議論です。 また、高齢者施設における服薬回数の統合(朝昼夕を昼1回になど)を提案することも、評価の対象となる可能性があります。
これは、薬剤師が医師や介護スタッフと対等に連携し、職能を存分に発揮できるチャンスが広がっていることを意味します。 「在宅医療に力を入れたい」「多職種連携を学びたい」という意欲的な学生さんにとって、こうした取り組みを実践している薬局は非常に魅力的なフィールドです。 採用活動においては、貴局での在宅業務のやりがいや、具体的な連携事例を伝えることで、志の高い人材を引き寄せることができるはずです。
6. 新設される対人業務評価とキャリアパス
さらに、薬剤師の専門性を評価する新しい加算も検討されています。これらは、スタッフのモチベーション向上やキャリア形成にも活用できます。
・吸入薬指導加算(インフルエンザ追加) これまで喘息などが対象だった吸入指導ですが、インフルエンザ治療薬についても新たに評価対象とする方向です。
・調剤後薬剤管理指導加算(服薬フォロー) 患者様が薬局を出た後のフォローアップについても、実効性のある形での評価が検討されています。
・バイオ医薬品・高額医薬品への対応 高度化する医療に対応し、専門的な管理や説明に対する評価軸が設けられる見込みです。
まとめ:制度変更を「採用の武器」に変える
2026年の改定は、「人への投資(賃上げ)」と「機能の充実」が二大テーマです。 「+3.09%」という数字の背景には、国が「薬剤師の処遇を改善し、良い人材を確保してほしい」と願っている事実があります。
まずはベースアップなどの仕組みを最大限に活用し、給与面での競争力を高めることが急務です。 そして同時に、「機能重視」の改定内容を逆手にとり、「うちは在宅やDX、専門業務にしっかり取り組んでいる将来性のある薬局だ」ということを、採用メッセージとして強く打ち出していくことが大切です。
変化の激しい時代ですが、それは裏を返せば、意欲ある薬局が正当に評価され、優秀な人材が集まるチャンスでもあります。 今回の改定を単なる制度変更と捉えず、「自局の魅力を再定義し、新しい仲間を迎える好機」として活かしていただければと思います。
関連リンク:2025年12月時点 薬局診療報酬改定の最新整理と経営
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