薬剤師の賃上げは進んでいる?中医協 入院・外来医療等の調査・評価分科会から見えた現実と年収アップの行方

2024年度の調剤報酬改定を受けて、薬局業界では「薬剤師の賃上げ」や「年収アップ」が注目されています。
しかし、実際に薬局で賃上げがどれほど進んでいるのか、気になる方も多いのではないでしょうか。

今回は、厚生労働省が公表した薬局の賃上げ状況に関する調査をもとに、現場のリアルと今後の展望を解説します。


調査概要と結果|賃上げを実施した薬局は45%

この調査は、日本薬剤師会が2024年2月から1か月間かけて実施したもので、全国491薬局から回答が得られました。

調査項目回答割合
2023年度に賃上げを実施45%
賃上げを実施しなかった49%
2024年度に賃上げ予定30%
賃上げ予定なし・未定70%(未定33%・予定なし37%)

約半数の薬局が賃上げを実施していないという現実が浮かび上がっています。


調査対象はスモールサンプル?全体像はまだ見えない

全国の薬局数は約6万件ある中で、今回の調査回答数は491件にとどまっており、一部の層に偏った調査である可能性も指摘されています。

全日本病院協会の津留英智委員も「実態把握にはより広範な調査が必要」とコメントしています。


店舗数別に見る賃上げ率|中堅規模がやや高い傾向

薬剤師・事務職員それぞれの賃上げ率は、店舗数によっても差が見られました。

薬剤師の賃上げ率(平均値)

  • 20~49店舗:3.2%(最も高い)
  • 1店舗:2.92%
  • 2~5店舗:2.78%

事務職員の賃上げ率(平均値)

  • 300店舗以上:6.25%
  • 2~5店舗:4.25%
  • 20~49店舗:4.1%

中堅チェーン薬局において、一定のベースアップを行っている様子が伺えます。


賃上げの財源はどこから?経営者の個人負担も

報酬改定での加算があったとはいえ、薬局の運営費(家賃・光熱費・物流費など)は高騰しており、賃上げの原資確保に苦慮している薬局も多いです。

  • 経営者の給与を減額して対応:99件
  • 経営者の個人資産で補填:57件

このように、身を削って薬剤師の給与を維持・増額しているケースも少なくありません。


報酬改定の効果は限定的?|鍵は「基本料」にあり

今回の報酬改定で賃上げを実施した薬局もありますが、財源は「調剤基本料増加分」からという改定が前回だったので、実質的な賃金改善は「次回の報酬改定(2026年度)」次第とも言えます。

昇給がない、または微増にとどまった薬局では、薬剤師の転職意欲が高まっている傾向があります。特に報酬改定のあった年は、7月賞与支給後に転職希望者が増加する傾向があります。

また最近では、20~30代の若手薬剤師に限定してベースアップを実施する薬局も見られ、年功序列からの脱却や、人材流出防止の意識が現れているとも言えます。


まとめ|薬剤師の賃上げは続くのか?

薬局業界では、薬剤師の年収アップ=人材確保の生命線となりつつあります。
ただし、現在の報酬体系の中での大幅なベースアップは難しく、次回改定(2026年度)に期待が集まる状況です。

こういった動きの中で、、来年7月の賞与支給後、昇給や賞与が減少した薬局では、薬剤師の転職検討が一気に高まる可能性もあるので、来年は人材の流動化も大きく進む可能性が出てきています。

来年に掛けて、大型のM&Aや経営統合/来年の改定など人材流動する材料が多くなっておりますので、薬剤師採用市場の動きにはより注視する必要があります。


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