2025年12月時点 薬局診療報酬改定の最新整理と経営・採用への影響

2026年度診療報酬改定の正式通知が2025年12月24日に発表され、
全体としてプラス3.09%の大幅改定が確定しました。

薬局にとっては、調剤基本料の見直しや賃上げ評価料の新設、集中率計算方法の改善議論など、
これまで以上に制度設計と経営の関係性が重要となる内容になっています。

今回は薬局診療報酬改定に関して、薬剤師採用という視点を中心に解説します。
・制度の基本整理
・調剤基本料の位置づけと今後の方向性
・薬剤師採用の観点からの影響

制度理解を深めることで、採用・人件費設計・経営計画の最適化にもつなげてください。

※前回の全体解説はこちらもご覧ください

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■ 診療報酬改定の基本と薬局への影響

診療報酬改定は原則として 2年ごと に実施され、
医療費全体の見直しを行うものですが、近年は物価高騰や人件費上昇の対応が主眼になっています。

  • 医療費全体の賃金引き上げ対応
  • 物価高対応
  • 通常改定が組み合わさっています。

診療報酬全体のプラス改定率が 3.09% となった背景には、
医療従事者の賃上げとコスト上昇への配慮が反映されています。

薬局向けには、改定全体の中で調剤基本料の見直しと、賃上げ評価料の位置づけ
が大きな注目点です。


■ 調剤基本料とは何か

調剤基本料は、単に処方箋を受け付ける対価ではありません。
薬局が抱える在庫リスク(廃棄・欠品・紛失など)の補填や在宅支援なども含めた、
薬局運営に必要な経費をカバーする性格の報酬です。

  • 医療機関への処方集中率
  • 薬局単位での処方箋受付回数
  • グループ単位での処方箋受付回数

経営的な視点では、処方箋枚数を左右する要素は単純な量だけでなく、
薬剤師を含む人員配置や業務効率化の仕組みにも関連しています。


■ 調剤基本料の複雑化は不可避の側面

調剤基本料が複雑な評価体系になっているのは、
薬局の形態や規模が多様化しているためです。

  • 1店舗のみの小規模薬局
  • 数店舗展開の法人
  • 数百店舗規模のドラッグストアチェーン

など多様な形態で運営されています。
これらを同一の基準で評価することは適切でなく、
公平性を確保するために複雑なルールが設計されています。

たとえば、令和4年度改定で見直された「基本料2」は、

  • 上位3医療機関への処方集中率が70%以上
  • 月間受付回数が4000回以上

という条件を満たす薬局が対象です。
ただし、集中率だけが高い薬局は効率性評価として疑義がつく可能性があり、
これは予算資料では指摘されていますが、直ちに報酬改定に反映されるものではありません。


■ 医療モール、敷地内薬局の調剤基本料評価

今回の診療報酬改定でも議論を呼んだのが、医療モールや敷地内薬局の扱いです。

医療モールでは複数の医療機関が同一建物内にあり、
処方箋受付回数が合算で4000回を超えるケースがあります。
これが「基本料2」の評価対象となることで、集中率や受付回数の増加が評価されています。

一方で特別養護老人ホーム等の施設処方を外来扱いにすることで
集中率を下げて有利に評価される可能性など、
抜け道的な算定リスク も指摘されてきました。

今回の改定議論では、こうした点に対して集中率計算の根本見直し案が提起されており、
規制強化や評価方法の変更が注目されています。

これは、薬局経営だけでなく薬剤師採用戦略にも影響する論点 となり得ます。


■ 中小薬局の収益性と採用への影響

財務省等の資料では、中小薬局が業界内で多数を占めていることが示されています。
これは、薬局数の多さと処方箋枚数の偏在が原因です。

処方集中率が高い薬局では比較的収益性が確保される傾向がありますが、
分散傾向の薬局や地方薬局では収益が伸びにくい構造があります。

収益性が人件費余力に影響するため、
薬剤師採用条件の確保や定着施策の実行力にも差が出る可能性があります。

  • 収益基盤が安定した薬局
  • 処方箋枚数・集中率が評価される薬局は、採用競争力を高めやすくなります。

採用力が弱い薬局は「人件費の制約」や「待遇面の弱さ」という不利要素を抱えやすくなります。


■ 賃上げ評価料の仕組みと薬局への意味

今回の改定で注目されたもう一つの論点が賃上げ評価料の新設です。

これまで「賃金引き上げ分」が基本料に含まれない形で設計されていたのに対し、
令和6年度改定では、賃上げに対する評価が制度として位置づけられました。

ただし、仕組みとしては次のような制約があります。

  • 役員報酬には使用できない
  • 賃金改善計画書の作成が必須
  • 申請・報告手続きが必要
  • 賃上げ分と相殺される傾向がある

このため、単純に「薬剤師の給与を上げれば良い」という話ではなく、
経営計画としての整合性が求められる評価料です。

採用担当者の視点では、賃上げ評価料を 採用条件強化にどのように結びつけるか
という観点が重要になります。


■ 診療報酬改定は「経営と人材戦略の融合」を促す

今回の改定は、単なる報酬点数の見直しだけではなく、
薬局経営の収益構造と 薬剤師採用・定着戦略の両方を見直す契機でもあります。

  • 調剤基本料の評価方法
  • 集中率計算の見直し
  • 医療モール・敷地内薬局の扱い
  • 賃上げ評価料制度の活用

などが、採用競争力や待遇設計に影響を与えます。


■ 今後の予定(暫定)

現時点で示されているスケジュールは以下の通りです。
2026年1月 厚労省説明会・資料提示
2026年2月 点数入りの詳細資料発表
2026年3月 診療報酬改定の正式通知発出
2026年6月 新報酬の施行開始

正式内容は年明け以降に確定していくため、継続的な情報整理と社内共有が必要です。


■ まとめ

2026年度の薬局診療報酬改定は、これまで以上に経営指標と採用指標が密接に結びつく改定です。

調剤基本料の評価方法は単なる収益評価ではなく、人件費確保の効率性とも結びついています。
賃上げ評価料や集中率の見直しは、薬局が採用条件を考える際に新たなポイントにもなるでしょう。

薬局経営者・採用担当者は、制度面だけでなく
処方構造・採用条件・人件費計画の整合性 を意識して戦略を立てる必要があります。

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