2025年12月時点:2026年度診療報酬・調剤報酬改定の最新動向と薬局の対応ポイント
今回のブログでは2026年度の診療報酬改定を12月時点での情報を、薬局に関係の深い診療報酬・調剤報酬改定のポイント をわかりやすく整理して解説いたします。
薬局運営者、採用担当者、人事ご担当者の方にとって、事前に理解しておきたい改定内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.2026年度診療報酬改定|基本認識
まず、今回の改定の背景から押さえておきましょう。日本経済は物価が持続的に上昇する新たなステージに突入しており、医療・薬局経営でもコストは増加しています。
しかし、従来の診療報酬・調剤報酬は2年に1回の改定であり、物価上昇に柔軟に対応できていませんでした。
特に薬局においては次のような課題が指摘されています。
- 光熱費・物品費などのコストが増加している
- 調剤報酬は簡単に引き上げられない
- 利益率が圧迫され、賃金の引き上げが困難
- 人材確保・人件費確保が難しくなっている
こうした背景を踏まえ、今回の診療報酬改定では賃金引き上げと人材確保への対応が大きなテーマとなっています。
2.2026年度改定の4つの方向性
診療報酬改定における4つの重視点を以下の表にまとめました。
| 方向性 | 説明 |
|---|---|
| ① 物価・人件費高騰への対応 | 医療機関・薬局のコスト上昇に柔軟に対応する診療報酬設計 |
| ② 地域包括ケアシステムの推進 | 地域における医療・薬局の連携強化 |
| ③ 医療DX・ICT活用の促進 | 電子処方箋、オンライン診療等の評価 |
| ④ 医療保険制度の持続可能性向上 | OTC医薬品見直しなど患者負担と制度安定性 |
以下、それぞれについて薬局との関係性を詳しく説明します。
① 物価・人件費高騰への対応
医療界の賃金は他産業と比較して上昇が遅れており、人材確保が深刻な課題です。
今回の改定では、診療報酬の増額分を薬局の賃金引き上げにつなげる方向性が示されています。
特に薬局の利益減少が統計で明らかになれば、その部分が診療報酬に反映される可能性もあります。
② 地域包括ケアシステムの推進
医療DXやICT活用と並び、地域包括ケアの推進が重要視されています。
薬局では、かかりつけ薬剤師機能や薬剤指導料の充実が評価ポイントとして取り上げられています。
③ 医療DX・ICT活用の促進
電子処方箋システムの普及に向けて、医療機関と薬局のデータ統合・重複処方チェックなどを薦めようとしています。
薬局は先行して電子処方箋の導入が進んでいるため、今後は医療機関側の導入支援が焦点となる可能性があります。
④ 医療保険制度の持続可能性向上
OTC類似薬の議論や選定療養の拡大などが検討されています。
これは単なる「検討」段階から「見直し」へと議論が進んでおり、薬局にとっても大きな影響が予想されます。
3.調剤報酬改定の重要点(薬局向け)
3-1.薬局ビジョンと現状の課題
2015年に策定された「薬局ビジョン」は、門前薬局から地域密着型薬局への転換を目指すものでした。
しかし2025年時点では、門前薬局の割合が増加し、目標達成が困難な状況にあります。
小規模薬局の乱立や、在宅訪問薬学管理が十分機能していないなどの課題が指摘されています。
3-2.調剤基本料の見直し
調剤基本料は薬局の収益に直結する重要項目です。
現在は処方受付回数や集中率に応じて分類されていますが、議論では次のような点が指摘されています。
| 調剤基本料 | 収益性 |
|---|---|
| 基本料1 | 中程度 |
| 基本料2 | 高い |
| 特別調剤基本料A | 低収益傾向 |
審議では基本料2の基準・評価方法の見直しや、特別調剤基本料Aの扱いの変更が検討されています。ただ基本料1の集中率に関しては、引き続き検討がされる見込みです。
3-3.地域支援体制加算の地域差
地域支援体制加算は都市部と地方で大きな差があります。
特別区(東京23区)では比較的高い評価率ですが、医療資源の少ない地域では評価率が低い傾向にあります。
| 地域区分 | 加算1 (%) | 加算2 (%) | 加算3 (%) | 加算4 (%) |
|---|---|---|---|---|
| 特別区 | 14.7 | 14.2 | 7.9 | 6.7 |
| 政令指定都市以外 | 中程度 | 低い傾向 | 低い傾向 | 低い傾向 |
この地域差是正のため、要件緩和などの検討が進んでいますが、「地域」による違いが明確化できないので、地域によって点数をというのは可能性としては非常に低い状況です。
3-4.対人業務評価の見直し
薬剤師の対人業務評価に関しても議論が続いています。
ポリファーマシー対策の逆行要素や、処方日数による評価基準の不明確さが指摘されています。
これらについてや服薬情報等提供料などについては、2026年度改定でも調整や点数変動が検討される可能性があります。
3-5.在宅業務評価の見直し
在宅患者訪問薬剤管理指導などの評価要件について、回数基準や地域差が議論されています。
特に地方薬局にとって算定が難しいケースが多く、この点の見直しが注目されています。 在宅薬剤管理の指導件数要件の見直しや新たな評価指標の追加の可能性は高い見込みです。
4.処方箋集中率・医療モール型薬局の扱い
処方箋集中率の計算方法は現行制度では「上位3医療機関」で行われていますが、
これが薬局の「抜け道」となる可能性が指摘されています。
大型モールやビル型施設・医療モール型ではこれを満たさないケースが増えています。
今回の議論では、「同一建物内のすべての医療機関合算で判定する」という案も浮上しており、制度設計の再整理が求められています。
医療モール型薬局は収益性が高く、結果的に報酬体系に影響を与える可能性があるため、
今後の議論で重要なテーマになりそうです。
5.OTC 医薬品制度の見直し
OTC医薬品の自己負担増加、選定療養などは薬局にも影響を与えます。
これは医療費制度全体の見直しに直結するため、継続的に注視する必要があります。 →2025/12/12 OTC類似薬の保険除外見送り決定との報道もあり、医師に類似薬を処方してもらう場合には、追加の負担を求めるという形で議論は進んでいます。
6.薬局の在庫管理・高度薬品取り扱い
在庫管理の高度化やバイオ医薬品対応についても議論されています。
小規模薬局では対応が難しく、今後地域連携による対応策が必要になる可能性があります。
7.改定準備に向けた薬局の対応
薬局としては、診療報酬・調剤報酬改定に対応するため、次のポイントを準備しておく必要があります。
■ 対人・対物業務の充実
■ 地域連携・在宅業務の強化
■ 在庫管理や高度薬品対応の検討
■ 調剤基本料・集中率対応策の検討
8.まとめ
2026年度診療報酬・調剤報酬改定は、薬局にとって構造的な影響が大きい改定です。
特に見直しが予想されるのは
- 調剤基本料の構造改革
- 地域支援体制加算の地域差是正と要件について
- 対人業務評価の見直し
- OTC医薬品制度の見直し
などです。
薬局運営においては、報酬体系の変化に対応できる体制整備が必要です。
今回の改定は単なる数字の見直しではなく、薬局のビジョンの再構築につながる可能性もあります。
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