2026年度調剤報酬改定と薬剤師採用戦略:答申に基づく詳細分析
2026年度(令和8年度)の調剤報酬改定は、物価、賃金対応という側面を持ちつつ、特定立地へのペナルティ強化や管理料の劇的な見直し、そして在宅医療の質的向上を強力に推進する転換点です。
1. 調剤基本料の再編と立地評価の厳格化
経営に最も直接的な影響を与えるのが、調剤基本料の判定基準の変更です。
☑調剤基本料の点数推移
物価高騰や職員賃金のベースアップに対応し、見た目上では全体的に引き上げられました。
| 区分 | 現行点数 | 改定後点数 | 増減 |
| 調剤基本料1 | 45点 | 47点 | +2点 |
| 調剤基本料2 | 29点 | 30点 | +1点 |
| 調剤基本料3イ | 24点 | 25点 | +1点 |
| 調剤基本料3ロ | 19点 | 20点 | +1点 |
| 調剤基本料3ハ | 35点 | 37点 | +2点 |
☑集中率85パーセントの壁と医療モールの合算ルール
・集中率85パーセントへの基準引き下げ
基本料2の判定基準である集中率が、従来の95パーセント以上から85パーセント以上へと厳格化されました。月間受付回数が1,800回を超え、集中率が85パーセントを超えると自動的に基本料2へ転落します。これは地方のマンツーマン薬局であっても避けられない課題となります。
☑医療モールの医療機関合算ルール導入
同一敷地内または同一建物内にある全ての医療機関を一つの医療機関とみなして集中率を計算します。個別のクリニックごとに計算して基本料1を維持してきた手法は封じられ、多くのモール型薬局が経営環境の変化を迫られます。
☑施設処方箋の集中率カウント除外
これまで、施設在宅の処方箋を集中率に合算することで全体の数値を薄め、集中率を下げて基本料1を維持する手法が一部で行われてきました。しかし、今回の改定からは施設在宅患者を外来扱いにして集中率を下げる行為が禁止され、一定の施設在宅処方箋は集中率のカウントから除外されます。この影響により、実質的な集中率が急上昇し、基本料1から2へ変更を余儀なくされる薬局が発生することが予想されます。
☑政令指定都市における立地ゾーン減算
政令指定都市や東京23区において、大病院の500メートル以内に新たに薬局を開設し、集中率が85パーセントを超える場合、基本料から15点を差し引く重いペナルティが課されます。
2. 調剤管理料(28日の壁)と診療科目別インパクト
調剤管理料の日数区分が廃止され、処方日数が28日以上か否かで評価が二極化されます。
・長期処方(28日分以上):60点
・短期、中期処方(27日分以下):10点(大幅減点)
この28日の壁は、応需科目によって影響度が変わるというのが鮮明に出てくる印象です。
| 診療科目 | 一般的な処方日数 | 経営への影響予測 | 具体的な背景 |
| 内科、循環器科 | 28日以上 | プラス予測 | 長期処方のメリットを享受し、枚数単価が向上します。 |
| 整形外科 | 7日から14日程度 | マイナス予測 | 14日処方は28点から10点へ激減の可能性 |
| 耳鼻咽喉科・皮膚科 | 7日から14日程度 | マイナス予測 | 短期処方が多いため、利益が大幅に削られます。 |
| 精神科・心療内科 | 処方元による | 処方元の影響次第 | 処方元の影響を受けやすい科目 |
3. 服用薬剤調整支援料2(薬剤レビュー)1000点新設
今回の改定で大きな注目点となっているのが、2027年(令和9年)6月より導入される服用薬剤調整支援料2(薬剤レビュー)への1000点という破格の点数新設です。
これはポリファーマシー解消に向けて薬剤師が減薬提案を行い、薬剤が減少した場合に算定可能となるものです。ただし、現時点では詳細な算定要件が発表されておらず、今後の条件次第で実効性が決まるため、注視が必要です。国が薬剤師に期待する役割が、正確な調剤から処方の最適化へと完全にシフトした象徴的な項目といえます。
4. 地域支援体制加算の5段階化と現状では未公表の項目
後発医薬品調剤体制加算は廃止され、地域支援体制加算(上位区分)へ統合されました。
☑詳細未発表の要件リスク: 加算は5段階に再編され、後発品割合85パーセント以上が必須となることは判明していますが、それ以外の要件の詳細は現時点で発表されていません。この未発表部分の要件がどうなるかが、今後の薬局経営に極めて大きな影響を与えることになります。
☑備蓄品目数(400〜500品目以上など)の維持に加え、他薬局からの分割販売への対応実績や、24時間対応の実績、さらには麻薬調剤の実績などがより厳格に評価される 。「届出さえ出しておけば算定できた」店舗であっても、実働が伴わなければ次回の更新時に算定不可となるリスクが高い状況。
☑かかりつけ薬剤師指導料についても、服薬管理指導料の体系内に統合されるなどの整理。 ここでの大きな変更点は、来局時だけでなく、電話やチャット等を用いた「期間中のフォローアップ」がより明確に評価の対象となる可能性が高い。
5. 在宅医療:点数引き上げと実績評価の厳格化
在宅医療に関する報酬は、今回の改定で最も手厚い評価がなされた領域の一つです。しかし、そこには明確な「質の向上」への要求が含まれています。
☑訪問回数実績の倍増(24回から48回へ)
地域支援体制加算の要件等に含まれる在宅訪問の実績について、従来の「直近1年間で24回以上」という基準が「48回以上」へと引き上げられる方針が示されました。
これは、月に4回程度の訪問を行っている薬局であれば容易にクリアできますが、たまに依頼が来た時だけ対応するような薬局を、地域支援の枠組みから除外する意図があります。
また、施設入居者への一括対応(施設調剤)よりも、手間のかかる「個人宅への訪問」が高い点数や追加加算で優遇される仕組みが強化されています。
☑多職種連携の新設加算
在宅現場における医師と薬剤師の連携を促すため、以下のような新設加算が注目されています。
- 医師・薬剤師共同訪問加算 医師の往診に薬剤師が同行し、その場で処方の検討を行った場合の評価(150点程度)です。
- 複数薬剤師訪問加算 麻薬の持続注入ポンプの管理や、複雑な医療的ケアを必要とする患者に対し、複数の薬剤師で対応した場合の評価です。
- 情報提供・連携の評価 ケアマネジャーや訪問看護師に対し、薬学的見地から質の高い情報を提供した場合の加算拡充です。
6. オンライン対応の整理統合
・服薬管理指導料4(ロ)への統合: オンラインの在宅患者訪問薬剤管理指導料などが統合
・加算の整理: オンライン加算が整理統合され、薬剤服用歴管理指導料は廃止されました。
・服薬管理指導料の新設区分: 3か月以内の訪問で45点から59点という区分が新設されます。
・薬局内のオンライン服薬指導については、敷地内薬局と同じ扱いとして減算(明記)されました。
7. 物価高、賃金ベースアップへの対応(不平等性と採用基準)
・賃金ベースアップ評価料:4点(令和9年6月より8点に倍増予定)。
・物価対応点数:1点(※月1回のみ算定可能)。
この評価料は基本給への反映が求められます。一度上げると下げられないため経営リスクとなりますが、採用市場ではこの加算を算定し還元しているかが企業の誠実さを測る基準となります。 また、恒久的な財源ではないものを固定給に反映させる不平等性も問題提起されています。
8. 2026年 薬剤師採用市場の激動:流動化の後に来る氷河期
改定に伴うM&Aの加速や処遇の変化により、2026年6月以降は転職が急増します。
・流動化のピーク: M&Aに伴う退職や賞与、昇格、昇給の減少での転職が増え、20代後半から50代、男性薬剤師の動きが活発化します。
・2年後の転職氷河期: この波は2年程度で収束します。閉局が進み、大手が新卒で充足させた後、市場は一気に氷河期へ突入。2から3年後には企業が薬剤師・薬学生を選べる市場感に変わる見込み
・リテンション戦略: 管理薬剤師の3年以上継続在籍要件(検討中)や、週31時間以上勤務、6か月以上在籍という施設基準を考慮し、地域固定型の採用と定着支援が経営の生命線となります。
関連リンク 2026年度診療報酬改定の短冊から読み解く薬局経営の転換点
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