2026年度調剤報酬改定「ベースアップ評価料」薬剤師・医療事務職への還元と実務対応
1. 2026年度改定におけるベースアップ評価料の構造
今回の改定で拡充されるベースアップ評価料は、医療従事者の処遇改善を目的として、調剤診療報酬という公的な枠組みで賃上げ原資を担保するものです。
薬局薬剤師と事務職員の年齢制限
2026年度改定で新設される「調剤ベースアップ評価料」において、新たに賃上げの評価対象として追加される職員には以下の制限があります。
・勤務薬剤師: 原則として「40歳未満」に限定されています。
・事務職員: 40歳未満の事務職員(受付や調剤補助員等)も新たに対象に含まれます。
・管理薬剤師: 40歳未満であっても、今回のベースアップ評価料の算定対象(賃上げ評価の対象)からは除外される点に注意が必要です。
病院薬剤師との決定的な違い
病院薬剤師と薬局薬剤師では、この年齢制限の有無が明確に異なります。
・病院薬剤師: 年齢制限はありません。
看護職員等と同様のカテゴリーに分類されており、2026年度改定においても全年齢を対象とした賃上げが可能です。
・薬局薬剤師・事務職: 原則40歳未満。これまで対象外だった若手の勤務医や事務職員と同様の扱いとして、今回新たに枠組みに追加されました。
2. 具体的な昇給額の目安:いくら上げるべきか
厚労省が示す処遇改善の目標水準に基づくと、基本給または固定手当の引き上げ額は以下の範囲が一般的な目安となります。
薬局薬剤師(40歳未満)の昇給目安
厚生労働省および中央社会保険医療協議会(中医協)の答申資料において、医療従事者の処遇改善に関する具体的な目標値が明示されています。
- 2024年度(令和6年度): +2.5%の賃上げ
- 2025年度(令和7年度): +2.0%の賃上げ
- 40歳未満の若手への重点配分: 2026年度改定では、これまで対象外だった40歳未満の勤務医や薬局薬剤師、事務職員を新たに対象に加えることで、若年層の給与水準を他産業の給与引き上げと同等(5パーセント前後)まで引き上げることを目的としています。
・月額目安: 約7,000円から15,000円程度のベースアップ(人数や自治体にもよる)
・年収目安換算: 約10万円から20万円程度の底上げ(人数や自治体にもよる)
ベースアップ評価料による収益の全額を対象職員の給与に充てた場合の想定値です。病院では夜勤手当の増額に充てることも認められていますが、薬局では基本給または毎月の固定手当での支給が原則となります。
薬局医療事務(40歳未満)の昇給目安
・月額: 約5,000円から10,000円程度のベースアップ
・年収換算: 約7万円から14万円程度の底上げ
医療事務職員についても、薬剤師と同様に評価料の原資を適切に分配する必要があります。特に薬剤師採用・薬学生採用競争が激しい地域では、この評価料を活用して他業種に見劣りしない給与水準を提示することが求められます。
3. 2026年5月までの補助金:都道府県別の実施例
2026年6月の診療報酬改定までの空白期間を埋めるため、全国の自治体で緊急支援措置が実施されています。これは国の補正予算を活用した一斉の動きであり、各地で詳細なルールが定められています。
愛知県の実施例
愛知県では「医療機関等賃上げ・物価高騰対策支援金(2025年12月分から2026年5月分)」として、医療機関や薬局への支援を行っています。
・支援の目的: 2026年6月の改定までの賃上げ原資を先出しすることで、早期の処遇改善を促す。
・特徴: 申請期間や対象施設の要件判定日が細かく設定されており、愛知県内の薬局はこの補助金を活用して一時金等の形でスタッフへ還元することが可能です。
・詳細URL: 愛知県医療機関等賃上げ支援事業
大阪府の実施例
大阪府においても「医療・介護等賃上げ支援パッケージ」に基づいた補助金が交付されています。
・支援の枠組み: 2025年12月から2026年5月までの半年分の賃上げ原資をサポート。
・特徴: 直ちに基本給を上げることが困難な薬局に対し、この期間に限り一時金や特別手当での対応を認めています。これにより、6月からの診療報酬移行に向けた準備期間としての活用が期待されています。
・詳細URL: 大阪府医療機関等賃上げ支援事業
4. 実務的な対応策:基本給か手当か、支給時期の戦略
厚生労働省は、賃金改善の方法として基本給の引き上げだけでなく「毎月決まって支払われる手当」の新設も認めています。
ベースアップ評価料手当の新設
賃金表を書き換えて基本給を底上げするのではなく、新たに「ベースアップ評価料手当」という項目を設け、従来の給与に上乗せして毎月支給する方法が可能です。
昇給時期を6月に変更する戦略
4月・5月は、上記のような都道府県の補助金(一時金形式)で対応し、6月から調剤診療報酬ベースの恒久的な手当に切り替えることで、収支の空白期間を作らずに最大限の原資を確保することが可能になります。
労働法上の留意点(不利益変更の法理)
一度固定的な手当として導入し、継続的に支払っている賃金は労働条件の一部となります。例え手当という形式であっても、使用者が一方的に廃止・減額することは労働法上の「不利益変更」に該当します。
導入時には、労働条件通知書等に「本評価料の算定が継続されることを条件とした手当である」旨を明記するなどの工夫が必要になるでしょう。
5. ベースアップ評価料算定にあたっての厳格な条件
ベースアップ評価料による賃上げは、原則として「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」の引き上げを指します。
・固定的な支給であること: 業績連動型の賞与や一時的なインフレ手当は、評価料の実績には含まれません。
・定期昇給との区別: 勤続年数や個人の能力向上に伴う通常の「定期昇給」とは別に、本評価料のためのベースアップ分として明確に区分して支給しなければなりません。
結論:2026年6月以降薬剤師採用は評価料への対応が基準に
今回の報酬改定の影響で、2026年6月以降の薬剤師採用はこれまで以上に活発化する見込みです。改定要件に伴うM&Aの加速や、昇給・賞与の減少による転職増が予想されるなか、「ベースアップ評価料を適切に算定し、還元しているか」という点は、40歳未満の若手薬剤師や事務職員が職場を選ぶ際の極めて重要な指標となります。
「後で外せる」と考えるのは危険ですが、最大限の原資をスタッフに還元する体制を整えることは、将来的な採用氷河期を生き抜くための不可欠な投資になってきます。
関連リンク 2026年度調剤報酬改定と薬剤師採用戦略:答申に基づく詳細分析
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