薬剤師採用市場に迫る構造変化とその影響とは?

現在、薬剤師の有効求人倍率は2.17倍と、全職種平均(1.32倍)を大きく上回る「売り手市場」にあります。一見すると、薬局にとって採用が困難な状況が続くように思われますが、医療政策や診療報酬改定を背景に、薬剤師転職市場、薬剤師採用市場は大きな転換点を迎えつつあります。
調剤薬局の経営者・採用担当者向けに、薬剤師採用市場の構造変化と、その中で求められる人材像、採用戦略の転換について解説します。
第1章:薬剤師採用市場が激変する理由
1-1. 増収減益と人件費高騰が直撃
2024年度の調剤報酬改定では、地域支援体制加算が7点引き下げ、調剤基本料の引き上げはわずか3点に留まりました。処方箋枚数が増えても、物価や人件費の上昇が利益を圧迫し、多くの薬局が「増収減益」に直面しています。
これは企業の採用体力に直結する問題です。採用広告費や紹介手数料をかけづらくなり、安定採用が難しくなる薬局も増加傾向にあります。
1-2. 2026年度診療報酬改定:脱・加算依存が加速
2026年には、後発医薬品調剤体制加算の廃止・縮小が高確率で進むと予測されており、これまで収益の柱だった加算が一気に揺らぎます。厚労省の方向性は明確で、「数量から質へ」「対物から対人へ」という流れです。
その結果、付加価値の低い薬局は加算を取れず淘汰され、M&Aを通じた集約化が進む可能性が高いのです。
第2章:求められる薬剤師像の変化
2026年以降の薬剤師採用では、単なる「調剤業務ができる人材」から、薬局の付加価値を支える人材へのニーズが高まります。
2-1. 在宅医療対応力
2024年度改定で「在宅薬学総合体制加算」が新設され、無菌調剤や24時間対応が求められる中、在宅経験者は希少性の高い人材となります。2035年には65歳以上人口が3,800万人を突破する予測の中、在宅は避けられない成長領域です。
2-2. 健康サポート薬局の実務経験
今後、「健康サポート薬局」が地域支援体制加算の要件に組み込まれる可能性があり、薬局としても対応が急務です。該当資格を持つ薬剤師、または実務経験のある人材は即戦力として高く評価されます。
2-3. 医療DX対応力・多職種連携経験
医療DX加算、電子処方箋の導入、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)連携など、デジタル対応が進む中で、ICTに明るい人材や、看護師・医師・介護職との連携経験がある薬剤師は重宝されます。
第3章:2026年までの採用戦略をどう変えるべきか
3-1. 「今すぐ動く」理由:求人数減少リスク
2026年以降は、加算が減り採用予算も縮小。求人数が現状より大きく減少する可能性が高く、競合薬局も優秀な人材の囲い込みを本格化させます。転職を検討する薬剤師にとっては今が最終チャンスであり、採用側もその波を逃さないことが重要です。
3-2. 採用広報・SNS戦略の再設計
InstagramなどSNSでの採用広報では、動画に加えてフィード投稿も重要です。薬剤師・薬学生・採用といったワードをキャプションや画像に自然に盛り込み、Instagram内検索や発見タブでの露出を高める工夫が求められます。
また、地域密着・在宅・健康サポートといった特徴が明確な薬局ほど、コンテンツに共感性を持たせやすくなります。
3-3. エージェント依存からの脱却も視野に
紹介会社を経由した採用は費用負担が大きくなりやすく、採用効率の悪化を招くリスクがあります。自社採用チャネル(SNS・リファラル・採用サイト)を確立することで、戦略的な採用力の強化が図れます。
第4章:薬局経営層・採用担当が今、取るべきアクション
- 薬剤師採用の要件定義を再設定する
- 調剤だけではなく、在宅経験・健康サポート薬局資格・ICTリテラシーなど、今後の薬局経営に必要な要素を人材要件に加える。
- 採用ブランディングを強化する
- SNS・採用ページでの情報発信を再設計し、薬学生や若手薬剤師に刺さるメッセージを明確化する。
- 報酬改定後の求人減少を見越し、”前倒し採用”を実施
- 2025年〜2026年前半までに積極的な採用を行うことで、他社に先駆けて優秀人材の確保が可能に。
- 人材要件に応じた育成設計も並行して進める
- すぐに採用できないスキル(例:在宅・健康サポート)の育成方針を設け、中長期的に人材価値を向上させる。
まとめ:転職市場の変化を「チャンス」に変えるために
薬剤師採用市場は今、劇的な構造転換の入り口に立っています。2026年度以降、求人倍率や応募者数、転職理由、求められるスキルはすべて変わっていくでしょう。
しかし、今このタイミングでこそ、他社に先駆けて行動すれば、優秀人材の採用と育成において大きなアドバンテージを築くことができます。
採用は経営戦略そのもの。変化の本質を理解し、必要な人材要件を再定義し、自社の採用力を磨き直す時期に入ってきていると感じています。
🔗 関連リンク
📞 採用に関するご相談はこちら
ROP株式会社では、薬局・ドラッグストア・病院・企業向けに 薬学生採用支援 を提供しております。
2027卒/2028卒に向けた薬学生採用広報、並びに薬剤師採用についても、現場目線でのご提案が可能です。
▶ 薬学生採用・薬剤師採用に関するご相談はこちら